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1960年代の米国では大手企業のロゴなどをプリントした広告としてのTシャツが広まり、その衣類は一種のコミュニケーションツールとなった。70年代カウンターカルチャーに後押しされそういったロゴや大手の企業をもじったパロディデザインのTシャツも出現した。 パロディTシャツは現在でもひとつのデザインジャンルとして愛好家達に楽しまれている。それらは元々ひとつのメッセージ性を保つものであり、着る人の思想や所属までをも連想させる存在だったが、大量生産されることにより身近になっていく反面、軽薄な存在へと変わっていった。企業広告Tシャツがユニークを手に入れたのだった。 その後、様々な街や美術館、通りや大学、カフェなどありとあらゆるTシャツが作られるようになった。そしてそれを着る人がどこを旅してきたかが一目でわかるような道具となる。その中にグラフィックデザイナーのミルトン・グレイザーが「ビッグ・アップル」のイメージを広めるために1976年に制作した「アイ・ラブ・ニューヨーク」のロゴがある。このシンプルなロゴはあっという間に米国の象徴となり、ありとあらゆる地域のおみやげTシャツに影響を与えた。また世界貿易センタービルの崩壊後、星条旗とともにこのNYのシンボルマークが人々を大いに勇気づけたことは言うまでもないでしょう。 現代アートはTシャツによって大きく発展したといっても過言ではない。なぜならTシャツはポップアートが「ポップ」であるがための絶好の表現材料だったからです。 70年代アーティスト達はこぞってTシャツを作品発表の道具として使い始める。その後80年代ではが自身のお店をオープンし、Tシャツをはじめとする雑貨などにキャラクター作品をプリントし販売した。そして90年代には日本のアニメやマンガをモチーフとしたキャラクター作品をTシャツなどで販売することによりポップアートを継承した。これら一連の流れはまたアンディ・ウォーホルのポートレート作品やポップアートの父、ロイ・リキテンシュタインがコミックの分野をアートにまで引き上げた功績が大きいでしょう。 こうしてアーティストとTシャツは自然と手を組むことになり、美術館でも販売され、大きなマーケットとなる。またTシャツはインスタレーションや視覚芸術の分野でも多く登場するようになった。そして必然的にマーケットとアートという付加価値を得たTシャツは、ファッションブランド業界でも彼らアーティスト達を起用することが新しい常識となっていきました。 Tシャツがモード界でベーシックアイテムとして登場したのは60年代のことだった。当時Tシャツはストリートでも受け入れられ、クリスチャン・ディオール、ニナ・リッチ、ジャック・エイムなどを始めとする様々なデザイナーズブランドがTシャツを発表するようになっていった。その一方で既製服メーカーも様々な色やデザインのTシャツを製造するようになった。 70年代前半ヒッピー達による「ラブ&ピース」運動や後半のパンクムーブメントなど、自由を求める思想とTシャツが見事にマッチした。それまでのメンズファッションとして捉えられていたTシャツを多くの女性達が着こなすようになった。こういった流れの中でTシャツは多くのカラーやデザインが作られるようになった。 80年代に入るとヴィヴィアン・ウエストウッドが、音楽や思想を背景にパンクファッションを確立し、ロックアーティストなどもTシャツを自分たちのスタイルとして着用するようになる。またスポーツウェアもストリートで受け入れられる一方でスーツ・ドレス・ワイシャツなど洗練された服も復活した。ブランドロゴの入った高価なTシャツが広まる一方でコピー商品が出回り、乱用やパロディなども生まれた。 90年代では80年代で興った様々な変化がうまく混合されてゆく。それまで主にカジュアルとして着こなされていたTシャツが山本耀司やジョルジオ・アルマーニらがスーツにTシャツを合わせるスタイルを提案し、ミニマル・ファッションが誕生した。またこの頃環境問題やリサイクリングなどの関心も高まりTシャツにもオーガニック綿を利用したものが登場した。 そしてTシャツはカルバン・クラインやダナ・キャラン、ジョルジオ・アルマーニらの提案によってカジュアルフライデーの普及もあり、ビジネスの場でも許されるようになった。こうしてラグジュアリーTシャツとして数多くのデザイナーが自分たちの個性をこぞってコレクションで発表するようにまでなった。 Tシャツはプリント技術的にも発展して誰でもがTシャツを手軽に作れるようになり、DIY(do it yourself:手作り)文化の延長上でカスタムメイドTシャツが盛んに作られるようになった。こうしてイベントTシャツが誕生し急速に発展した。 例えばDJ達がたった一度きりのライブのためにイベントTシャツを作る、出版社のパーティーの贈答品として、映画やアニメのプロモーションの媒体として、音楽フェスティバルやコンテストなどの祭典の記念品として、お店の開店記念など。またそれらの中からはストリートで好んで着られるようなものも数多く作られた。またそれらは、使用後は本来の意味を問わずデザイン性のいいものはUSEDとしてももてはやされた。もちろん価値のあるものはコレクターズアイテムとしてマニアの間で流通している。 そして日本ではユニクロの出現により、高品質かつ割安のTシャツが販売されアパレル業界に衝撃を与えた。そこに端を発した既製品メーカーの品質、価格競争によって、更に数多くのアイテムが低価格で作られていき身近なものとなっていった。 そういして現在では様々なデザインやカラー、価格のTシャツが存在し、様々なプリントや装飾をほどこされたものが発表され続けている。分野・ジャンルにとらわれず、それぞれの目的やスタイルに応じて自由にカスタマイズできるようになったのだ。仲間同士のコミュニケーションの道具としても、ビジネスやエンターテイメントにも幅広く利用され、今後さらに未知の可能性を秘めています。 それでは今後どのようなTシャツが出現するのだろう? 例えば最近では特殊な繊維により作られた衣類上に、まるでTVのモニターのように映像を映し出す技術も研究されている。ウェアラブル・ディスプレーも活発に研究がなされている分野だ。また医療分野でも然り、心拍数や呼吸回数、体温など感知するTシャツなども使われ始めている。 エレクトリック&デジタルテクノロジーとしても、また人々の定番ファッション、アート表現の素材としても、今後益々更なる発展をしようとしている衣類であることは明確でしょう。